毎日大量の日本株を売買 トレーダー不在のXTXマーケッツ

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ZAR AMROLIA

日経平均レンジの動きに海外投資家の影

株式市場では、米国発の貿易戦争突入への警戒感から下振れリスクが継続しています。

日経平均株価は、5月21日に一時2万3,050円の高値をつける場面があったものの、その後は4月中旬以降の安値圏にあり、6月は2万2,000円から2万3,000円のレンジで推移しました。

そんな中、株式市場関係者の間ではある海外投資家の動向に注目が集まっています。その海外投資家とは、ロンドンに拠点を置く「XTXマーケッツ」です。

米国HFTに挑む英クオンツ

XTXマーケッツは、クオンツトレーディングを手がけるマーケットメーカーです。

2年前に設立されたばかりですが、グローバル市場における1日あたりの総取引量は1200億ドル(約13兆円)に達するといわれています。

取引している商品は為替が大部分を占め、すでに外為市場では世界でトップ5に入る有力プレーヤーとして認知されていますが、現在は為替以外に株式、商品、債券取引にも勢力を拡大しています。

同社のライバルは、ハイフリークエンシートレーディング(HFT、高頻度取引)を手がけるバーチュ・ファイナンシャルやシタデルだといわれていますが、XTXのザール・アムロリア共同最高経営責任者(CEO)は「高速ではなくスマート(賢い)が目標だ」と述べるなど、これを否定しています。

HFTが超高速ネットワークで得られた情報に基づいてトレーディングを行うのに対し、XTXでは数分あるいは数時間のうちに証券の価格がどう動くかを予測するためにテクノロジーを用いており、HFTとは対照的なストラテジーを採用しています。

同社コンピューターの処理能力は、世界最高のスーパーコンピューターにも匹敵するといわれています。

2014年に、MiFIDⅡのマーケットメーカーへの規制が発表されましたが、高い技術力を持つ同社はこの新規制を回避する執行ストラテジーを開発し、機関投資家への提供を開始した結果、欧米系ヘッジファンドなどの注文を集めています。

トレーダー不在の「巨大ヘッジファンド」

マーケットで存在感を増している同社ですが、社員はわずか78名しかおらず、取引を執行するトレーダーは一人もいません。

アムロリア共同CEOによると、同社ではトレーディングについて人間が意思決定をすることはなく、アルゴリズムが意図した通りに機能しているかどうかをトレーディングアナリストがチェックするのみだとのことです。

同社は、マーケットメーカーでありながら巨額の顧客注文に自己勘定で対応する点でも有名で、日本株式に対してはマーケットメイク型クオンツ戦略で毎日大量の日本株の売買注文を出しています。

日本株の取引額は、1日あたり1000億円を優に超え、相場が急変した今年2月には1日で5,000億円も取引きしたとも噂されています。

日本における取引では、主に米系証券2社、欧州系1社を経由しているとの見方があり、「往復数千億円の売買代金を寄り付き、午後、引け前に分散しているようだ」という指摘も出ています。

同社はマーケットメーカーでありながら、その取引額の大きさから日本市場に与えるインパクトはHFTやヘッジファンドとほとんど変わりません。

相場に大きなトレンドが発生しなければ、レンジの上限・下限でサヤを抜くトレードが中心となり、結果的に同社のトレードが足元でレンジ相場が続いた要因のひとつとなっているとも考えられます。

今月2日の株式市場では、先物主導で仕掛け的な売りが入り、日経平均株価は前営業日比492円58銭安の2万1811円93銭で引けました。

中国や韓国などアジア株式市場が大きく下げたことも影響し、東証1部の値下がり銘柄数が全体の9割を超え、ほぼ全面安に近い状態となっています。

レンジの下限2万2000円を割り込んだことにより、XTXのトレーディングにどのような変化があるか、株式市場関係者は警戒感を強めています。

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