昨年11月、ブルームバーグは中国全体で数千万戸に上るアパートや家が空き家となっていると報じました。
調査を行った四川省成都市の西南財経大学の甘犁教授によると、中国の都市部の住宅のうち空き家は約22%であることが研究結果に示されており、5000万戸余りに上るということです。
2017年の調査に基づく最新データでは、政府の不動産投機抑制策も十分に奏功していないことが示唆されており、不動産市場が傾き始めた時に、空き家所有者が物件売却を急ぐ展開になれば、中国政府にとって悪夢のシナリオとなります。
甘教授は「空き家率がこれほど高い国はほかにない」と述べ、「不動産市場で亀裂が表面化した場合、売りに出される住宅が洪水のように中国に打撃を与えるだろう」と述べています。
中国に忍び寄るリーマン・ショック超えの不動産バブル崩壊
上がり続ける住宅価格のカラクリ
一方、不動産研究機関である中国指数研究院の調査によると、今年1月の中国都市部の住宅価格は緩やかなペースで上昇していることがわかりました。
調査によると、主要10都市の中古住宅の平均価格は前月比0.64%減となりましたが、100都市における1月の新築住宅の平均価格は前月比0.22%増となっています。
中国の不動産業界は近年、政府の管理措置により、伸びが緩やかになっており、2018年の不動産販売額は前年比12.2%増で、前年を1.5ポイント下回りました。
同研究院は、監督管理当局が今後も市場の安定に注力すると予想でき、住宅価格は安定的に推移するとの見解を示しています。
しかし、すでによく知られているように、住宅価格をはじめとする中国の経済統計は任意性が高く集計の基準もあいまいで、その信頼性には疑問が残ります。
政府統計をもとにした、2012年から6年間の住宅の単価は、2014年を除いて上がり続けていますが、中国の新築住宅の価格は日本や米国のように市場の売買で決まったものではなく、新築住宅価格やGDP統計には、作りすぎて残った住宅在庫の値下がり統計が入っていません。
住宅と商業用不動産は、固定資本投資の新築価格として、中国のGDPを底上げしています。
しかし、膨大な売れ残り在庫が世帯に売れるときの価格を統計した場合、中国のGDPは2ポイント程度低下し、銀行やノンバンクの不動産融資は不良化し、200兆円超の不良債権を抱えることになるでしょう。
中国のいびつな経済構造
一方、住宅ローンの残高は2016年で20兆元(320兆円)と、日本とほとんど変わらない額ですが、中国の住宅ローン残高には、店舗やオフィスの商業用不動産のローンは含まれていません。
中国の主体別負債を見てみると、企業部門の負債は2018年の3月には22兆ドル(2420兆円)に膨らみ、GDP比184%、年平均の増加率は21%となっています。
年率20%という高さで負債が膨らみ続けてきた理由は、年平均1,000万戸の建設した住宅の多くが売れ残り在庫となっているからです。
新築住宅の多くは売れ残り、売れていないため価格は最初のまま統計され、次のまた上がった新築価格が計上されているのでしょう。
また、中国の企業負債は毎年平均2兆ドル(220兆円)増え続け、一向に減っていません。
新築住宅が売れなければ、世帯のローンには振り替わらないため、企業の建設費の負債が増え続けているのだと推測されます。
リーマン・ショックを超える金融危機も
折しも中国は現在、米国との貿易戦争の真っただ中で、輸出が減少しGDPの伸びが低下することが予想されます。
また、増え続けていた中国の人口は、横ばいから下落傾向にあり、増え続けていた住宅の需要動機が下がり、少しずつ減少に向かうでしょう。
政府が管理している新築住宅価格に、需要数の急減が反映されることはなくても、実際の売買市場では価格は下がって行きます。
今後、住宅の景気減速が大幅に加速し、5000万戸の空き家が突然市場に投入されるようなことになれば、間違いなくリーマン・ショックを超える金融危機が起こるでしょう。