米国債長期金利利回りについておさらい

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基軸通貨であり、為替相場の中心といえる米ドルですが、その値動きに影響するものとして10年国債や30年国債に代表される長期金利利回りがあります。

この長期金利利回りは、FRBの政策金利(FF金利誘導目標)とは違い、市場の需給に従って動くため、必ずしもこれまでのFRBの利上げトレンドと同じ方向に動いてきたわけではありません。

しかし、2018年に入りアメリカ長期金利は10年債が5年ぶりに3%の大台に乗せるなど、利上げに合わせた動きをしています。

そのことが昨今のドル円上昇に影響したことは想像に難くありませんが、30年債が節目の3.25%に到達したのをよい機会として、米長期金利に関するポイントをわかりやすくご説明します。

米30年債が3.25%に到達! ドル高トレンドも一服か!?

ドル円と米長期金利の関係

通貨高あるいは通貨安になる要因としては、大きく分けて2つあります。

1つは政治的要因です。
例えば、戦争や紛争が起こっている国の通貨からは資金が流出し、反面で政治的に安定している国には資金が流入します。

もう1つは経済的要因です。
例えば、その国に対する投資が活発になったり、あるいは貿易黒字が拡大したりすると、その国の通貨の需要が増えますから、通貨高になります。

また、国債をはじめとする債券市場や株式市場の動向もその通貨に対する需要に影響することは言うまでもありません。

特にアメリカ国債は「最も安全で基本的な投資商品」とみられていることもあり(アメリカが債務不履行になる可能性は極めて低いとみられているからです)、その利回りはそのほかのすべての投資商品の価値に影響します。

アメリカ国債といっても、2年債のような短期のものから30年債という長期にわたるものまでさまざまな種類があります。

この中でドル円やユーロドルなどに大きな影響を与えているのは、10年国債の利回りです。
基本的に、10年国債の利回りが上昇すればドルに投資する価値は高まるためドル高になり、反対に利回りが低下すればドル安になる傾向があります。

昨今の米長期金利動向

アメリカの長期国債利回りは、リーマンショック以前から長期的に下落傾向にありました。
例えば10年国債利回りを見ると、2007年時点では5%を超えていましたが、2012年には一時1.5%を割り込むところまで下落しています。

この一連の下落が底打ちし、再び大きく上昇を開始するきっかけになったのは2016年後半の「トランプ相場」です。
2017年はおおむね2%台で横ばい推移していましたが、2018年になると年初から大きく上昇し、4月には3%に到達、そして5月には一時3.1%まで伸びています。

また、10年国債よりもさらに長期である30年国債利回りも3.25%に一時到達しました。
この3.25%という水準は2016年末のトランプ相場における最大値であり、また2015年にも複数回到達したけれども、その後反落した非常に重要な数値です。

現時点(2018年5月23日執筆時点)では、まだ3.25%を上抜くような動きにはなっていません。

今後の長期金利見通し

FRBの政策金利であるFF金利誘導目標については、2018年中に2回ないしは3回の利上げが予想されています。

問題はその利上げに対して長期金利が追随するかです。
長期金利の下落トレンドは年単位の超長期トレンドなので、このトレンドが終わってトレンドが転換するには、何か大きな原因がなければならないとみています。

しかし、アメリカの景気はすでにこれ以上良くなりようがない水準まで改善しているため、ここからさらに金利が上昇し4%や5%に向かっていくのは難しいのではないでしょうか。

ドル高トレンド一服の可能性

104円台から一時111円台までのドル円の上昇をけん引したのは、主に米長期金利だとすれば、今後は金利上昇に任せて上昇していくのは難しいというのがメインシナリオです。

ただし、対ドルのカウンター通貨の中で、最も金利差が開きやすいのは日本円だというのも事実です。
日銀がYCC(長短金利操作付き量的質的金融緩和)を行っているため、日本の長期金利は0%付近に固定されているためです。

そのため、ドル円の上昇が一服したからといって次は下落なのかというのは早計です。

むしろ、夏に向けてはユーロやポンドなどの各国の事情に合わせて金利が変動する通貨とドルを組み合わせてトレードしてみてはいかがでしょうか。

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