逆イールドをもたらしたヘッジファンドの「カーブフラットニング・トレード」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カーブフラットニングトレード

今週開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)について、債券トレーダーは利上げされることがほぼ確実と見ていますが、FOMC による2019年の金利予想と景気見通しの発表に注目しています。

3年債と5年債のスプレッドが逆転する、いわゆる「逆イールド現象」が発生し、2年債と10年債のスプレッドも2007年以来のマイナスに近づく中、FOMCメンバーが来年3回の利上げ見通しを確認すれば、カーブはさらにフラット化する可能性が高くなります。

逆イールドが景気後退を予兆するサインであることはよく知られていますが、今回の逆イールドは米国の景気腰折れ懸念で発生したわけではなく、ヘッジファンドなどの投機筋による「カーブフラットニング・トレード」によってもたらされたことは意外に知られていません。

2019年の金利予想と景気見通し

カーブフラットニング・トレードとは

カーブフラットニング・トレードとは、長期債を買って短期債を売却するなど、イールドカーブのフラットニング(平坦化)に賭ける取引のことです。

イールドカーブは、債券市況を分析するために用いられることが多い指標で、景気の先行きも予想することができるとされています。

イールドカーブがスティープ化する(傾きが急になる)ということは、今後景気が拡大して行く可能性があり、好況時には金利が上がりやすくなります。

一方、イールドカーブのフラット化は景気後退入りのシグナルと言われます。景気後退局面とは、供給が需要を上回っている状態、つまりデフレの状態です。

このような局面では、政府は金利を低めに誘導して緩和的な政策を行い、これが景気後退時に金利が下がるシグナルとなります。

景気回復が軌道に乗り好況(あるいは景気の過熱)の状態になると、中央銀行は利上げによって金融引き締めを行うため、金利は全般的に上昇し、特に政策金利の影響を受けやすい短期金利が長期金利よりも上昇します(長短金利差縮小:フラットニング)。

ヘッジファンドは、こうした動きを予想し、イールドカーブのフラット化の方向に賭けてポジションを取っているのです。

米2年債のショートは過去最高水準

ブルームバーグのデータによると、ヘッジファンドは先月以来、米2年債のショートポジションを拡大しており、現在36万1560枚と過去最高まで1000枚以内に迫っています。

一方、長期債券については、10年債先物のネットショートポジションは29万3186枚というかなりの規模ですが、9月には75万枚超のショートだったことを考えると、ショートポジションを大幅に絞り込んでいることがわかります。

こうしたヘッジファンドのポジションは、実質的に2年債と10年債の利回り格差が縮まるという予想を反映しています。

2年債と10年債のイールドカーブは、ここ10年の間で最もフラット化しており、先週には長短逆転まで10 ベーシスポイント以内に迫る場面もありました。

状況的には、そろそろカーブフラットニング・トレードを手がけるヘッジファンドが利益確定の動きに出てもおかしくありませんが、そうはいかないヘッジファンドの事情があります。

カーブフラットニング・トレードは「打ち出の小槌」

ヘッジファンド調査会社ユーリカヘッジのデータによると、同社の主要ヘッジファンド指数は年初来で2.40%低下し、2000年以来わずか3度目となる前年比マイナスで終ろうとしています。

カーブフラットニング・トレードは成功しているにもかかわらず、ヘッジファンドの成績は思わしくなく、ヘッジファンドにとってはこのカーブフラットニング・トレードこそが、収益を生み出す貴重な「打ち出の小槌」なのです。

FOMCが現在の利上げ回数の想定に近い予測を維持すれば、カーブはさらにフラット化し、今月中か来年1月初めに2年債と10年債が逆イールドとなる可能性が高いといわれています。

仮にFRBが来年利上げのペースを緩めるとしても、依然として来年以降の金融政策に対する不透明感は強く、ヘッジファンドは当面このポジションを維持すると予想されます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す