レイ・ダリオの予言から見える米国バブル崩壊の影

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

米国株バブル崩壊

今年の7月27日、トランプ米大統領は第2・四半期国内総生産(GDP)速報値が前期比年率4.1%増と力強い成長を記録したことについて、「自身の指導力の下で経済が目覚ましく好転しつつある兆しだ」と称賛しました。

また、FRBのパウエル議長も先月3日、米国経済のパフォーマンスを「極めてポジティブ」「類いまれな」「非常に明るい」などと重ねて賛美するとともに、好調は続くとの見通しを示しました。

両者とも、足元の米国経済は堅調に推移しているとの認識を示していますが、こうした楽観論に警告を鳴らす人物がいます。

「ヘッジファンドの帝王」と呼ばれる、ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオです。

ダリオは、今年9月のブルームバーグテレビジョンのインタビューで「米国は2年後に景気が下降に転じる可能性が高い」との見方を示し、「ドルは最大30%下落する可能性がある」と述べました。

米国バブルはいつ賞味期限切れになるか

レイ・ダリオは米国債の需要構造が大きく変化したとみる

ダリオは、「国内外での米国債需要は米政府の借り入れニーズに追いつかなくなる」と述べていますが、すでに米国ではこのダリオの発言を裏付ける兆候が見られています。

米財務省は先月、2018年の国債発行額が昨年の約2.5倍に当たる1兆3380億ドル(約150兆円)に達する見込みだと発表しました。

大型減税や歳出拡大で財政赤字が膨らみ、その穴埋めに国債増発を強いられており、2010年の1兆5860億ドル以来、8年ぶりの高水準となる見込みです。

FRBは過去の量的緩和で買い込んだ米国債の保有額を減らしており、2018年だけで2000億ドル強減らす見込みですが、一方、財務省はトランプ大統領が署名した1兆5000億ドル規模の減税の財源確保のために、借り入れを拡大しつつあります。

プライマリーディーラーの予測では、2018年度に市場で調達が必要な財政資金額は9550億ドルと、前年度比で84%増となります。

2019年度は1兆830億ドルへとさらに膨らみ、これまでと同じペースで米国債を発行する場合と比べ、調達額は2018年度に約3700億ドル、2019年度は約8800億ドルも多く、その分は国債を追加発行しないと賄えません。

米国内における米国債の需給構造が大きく変化する中、こうした供給を吸収できるほどの需要が存在するのか甚だ疑問です。

利上げ継続がバブル崩壊の引き金に

またダリオは、「金融当局は、ゆくゆく利上げよりむしろプリントマネーの必要性が生じ、それが急激なドル下落を招く」と予想しています。

12月に開催されるFOMCでは、0.25%の利上げが実施されることがほぼ確実で、来年には2回か3回の利上げが予定されていますが、ダリオは「その利上げは恐らく過剰で、予定されている利上げは不可能だ」と語っています。

FRBは、「法人減税などの景気刺激策が実体経済を押し上げ、経済成長は力強く上昇している」との見解を示していますが、ダリオは、「現状ではFRBは実体経済よりも資産価格を注視すべき状況にあり、金利は既に資産価格を毀損するレベルにまで上がってしまっている」と述べています。

10月に発生した世界同時株安は、利上げとバランスシート縮小という金融引き締め政策によって引き起こされましたが、本質的には、リーマンショック以降に継続して行なってきた量的緩和による金融バブルが原因となったことは間違いありません。

米国の金融引き締めは今に始まったことではなく、すでに2017年の9月から始まっていましたが、引き締めが行われているにもかかわらず、米国株は上昇を続け、いわゆる「量的緩和バブル」の状態が続いていました。

市場関係者の中には、著名ファンドマネジャーのドラッケンミラーのように「たとえ好調な経済に悪影響を及ぼすことになっても、金融引き締めを継続すべきだ」と主張する人もいます。

しかし、このまま金融引き締め政策を継続すれば、株式市場が暴落し、リーマンショック以降続いていた量的緩和バブルが崩壊する可能性があります。

引き締め継続か、それとも方針転換か、FRBのパウエル議長は難しい舵取りを迫られることになるでしょう。

 

Follow @tradersFX_com

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す