またしても破綻リスクが顕在化したドイツ銀行

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Deutsche Bank

イタリアが政情不安で株も債券も大きく売られたちょうど同じ時期、ウォールストリートジャーナルが報じたドイツ銀行に関するFRBの内部査定評価のニュースでドイツ銀行はいきなり7%を超える株価下落に見舞われることとなりました。

内容は、FRBがドイツ銀行の米国内における業務に問題ありと1年前から同様の指摘をしており、驚きはありませんでしたが、ドイツ銀行は2016年にも破綻リスクが強まったとして非常に警戒された経緯もあったためこのような市場の反応を招きました。

多くの市場関係者は、この報道が出る前から今年も年初からすでに4割以上株価が下落し、行員7000人のリストラの話もでて、問題が深刻化しているのではないかと警戒していたため、この報道を通じて確信的に売りが集中したという側面もあります。

ドイツ銀行株価下落

ドイツ銀行のデリバティブ契約拡大

2016年ドイツ銀行の破綻リスクの話が持ち上がった際にはLIBORに絡む不正の損害賠償の支払いや不良債権増加による引当金の予想以上の増大、そしてデリバティブによる莫大な損失の発生懸念などが指摘されていましたが、現状では業務内容が著しく改善したとはまったく言い難く本当に大丈夫なのかが大きな問題になりそうです。

特にドイツ銀行の場合リーマンショック後に撤退した米系投資銀行の代わりとしてデリバティブ契約を著しく拡大してきた経緯があり、ドイツの金融当局も株主も実に日本円にして2200兆円ほどになると言われるデリバティブ取引の中身について正確に把握することが難しいとされていることが最大の問題といえます。

2000兆円超の規模と一口に言いますが、日本が赤字国債発行で追っている負債がほぼ1100兆円レベルですからざっとその倍であり、もしこの銀行がストレートに破綻に追い込まれた場合、ドイツ一国では支えきれないのではないかという噂さえ飛び交うほどのリスクを抱えている状況にあります。

ドイツ最大の銀行をなぜ金融当局は監視できなかったのか?

ドイツ銀行は総資産額規模が日本円にして200兆円超と第二位のコメルツ銀行の3.3倍強にもおよぶ巨大銀行で日本国内ではみずほファイナンシャルグループ並の規模を誇っているわけですから、このサイズの銀行が破綻ともなれば社会的、経済的リスクはかなり大きくなることは間違いない状況です。

ドイツ銀行は4月に前任のCEOが事実上解任されクリスティアン・ゼービング氏により経営再建に乗り出している途上にありますが業績不振の主因となっている投資銀行業務を大幅に縮小し株式取引業務で人員を25%減少させるといった計画をすでに発表しています。
9万7000人を誇る行員数の7%をいきなり削減しようというのですからいかに危機的な状況かは推測がつきますが、実際に不採算部門の縮小のみならず負債をどの位抱えて回収不能なのかが大きな注目点となりそうです。

問題となっているデリバティブ契約はそもそも対象範囲が広く、カスタマイジングされていることから外部から把握することが極めて難しく、何がきっかけて状況が悪化するかが正確にわからないという点で非常に大きな問題で、なぜドイツ政府がここまでの状況に陥るまで放置していたのかの責任も問われることになりそうです。

現在はイタリアの債務問題が注目を浴びていますが、ある意味ではドイツ銀行のリスクのほうがそれよりもはるかに大きなものになっている可能性もありここからのドイツ銀行の動向についてはかなり注意しながら見守っていく必要がありそうです。
下手をするとリーマンショックから10年目の今年大きな相場暴落原因をつくるのはドイツになる可能性すら心配しなくてはならない状況です。

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