アメリカ合衆国の貿易戦争 トランプ大統領の真の狙いとは?

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kanzei

トランプ大統領は、鉄鋼とアルミニウムの輸入増加が安全保障上の脅威として、関税をかける事を正式決定しているが、除外された国々を見る事で、今後の方向性を示唆している事が判断できます。

トランプ政権の命運を握るともされるだけに、この政策から見えてくるものを分析していきます。

アメリカ合衆国の関税除外国からその狙いが見えてくる

関税除外国の共通点 トランプ大統領の判断基準は?

トランプ大統領は今年3月、鉄鋼とアルミニウムの輸入が国家の安全保障の観点から問題があるとして、鉄鋼25%、アルミニウム10%の関税をかけると発表しました。

これは、アメリカの国内法を一方的に適用したもので、世界基準のWTOのルール外となる。
中国は反発し、報復関税を掛けると発表した事で、ドル売りが加速しダウも大幅下落となったが、その後は関税の話題も落ち着いた事から、ドルとダウの両方が持ち直している。

中国が大反発した事で、騒動は長期化し、いまも水面下での交渉は続いている。
一度は折れたかのように見えた中国も、交渉時には侃々諤々やりあっていると報道されている。

さて、このニュースにおいては見落としがちだが、すべての国が関税をかけられているわけではない。
関税をかけられた国と関税をかけられていない国がある。

つまり米国にとって味方と判断された国と、敵と判断された国があり、その違いを見ることで米国の真意が見えてくるのではないだろうか。

鉄鋼とアルミの輸入制限除外国一覧

では実際に関税除外国をみてみよう。

  • カナダ
  • ブラジル
  • 韓国
  • メキシコ
  • ドイツ
  • オランダ
  • オーストラリア

※オーストラリアはトランプが確約し除外交渉中

傍目には、隣国や米軍駐留国、FTA合意国を優遇して除外したとされるが、実はそこには米ドルの存在が関係しています。

カナダとオーストラリアは、アメリカと連動高いカナダドル、オーストラリアドルで、韓国ウォンは過去の通貨危機から米ドルに強く依存しています。
同様にブラジルレアルも米ドル依存が高いのは、周知の事実です。
ドイツとオランダは、米ドル以外の理由も鑑みれるが、今回の除外国にさらにイギリスやニュージーランド、シンガポールなどが追加されれば、その意味合いは一段とハッキリします。

貿易戦争から「米ドル一強」を目指す

トランプ大統領は常々、「強いアメリカを復活させる」と豪語してきましたが、具体的にはどうするのか、理解に苦しむ事がありました。
発言撤回だけでなく、政権中枢の重要人物でさえいつ解任されてもおかしくない混迷が続く事から、今回の関税措置も一時的なものだとする声もありますが、騒動は一時的だったにせよ計画は着々と進行しています。
これはいつもの思い付き発言ではなく、反対に入念な下準備と計画性を感じるのは筆者だけでしょうか。

確かに、メキシコ国境への壁建設、北朝鮮への制裁や核廃棄要求、中国への経済圧力などは、大局的な視野では方向性が分からず、発言もその時々で二転三転するので驚きもしなくなります。

しかしアメリカファーストの真意に「米ドルファースト」があるとするなら、これらの発言や行動も納得できます。
米ドルは現在も世界で最も多く利用されている基軸通貨ですが、その割合は年々低下して2016年では63%台の低水準まで落ち込む緊急事態となった。

それでも他の主要通貨と比較をすれば圧倒的な割合を誇るが、今後の中国の台頭が念頭にあれば、米ドルの通貨価値を高める事が何よりも直近の課題である事が明白となります。

地理的な立地条件もあるが、カナダやオーストラリアは政治と経済的にも伸び代が感じられないので手厚く優遇し、ドル強化の役割を果たしてもらう。

EUからはイギリスが抜けてしまうので、大国ドイツとは協力関係を結び、EUの海の玄関口であるオランダを優遇するのは軍事的な意味合いが強い。
メキシコは移民問題などで揉めている印象もあるが、米国製造業を支えているのはメキシコ人労働力であり、第一隣国を優遇しない大国などはあり得ないので、ここがアメリカの賢さでもある。

アメリカ合衆国が仕掛けた貿易戦争と一部で揶揄されていますが、世界的な貿易摩擦が広がる事で買われる通貨は、基軸通貨である米ドルなのは過去の歴史が証明しています。

混乱する経済情勢を待ち望んでいるのは、他でもないトランプ率いるアメリカそのものだと捉えるべきなのです。

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