カーナビや車載音響機器を手がけるアルパインが、「物言う株主」オアシス・マネジメントに狙われています。オアシスは香港のヘッジファンドで、現在アルパイン株式の9.18%を保有し、アルプス電気(40.43%)に次ぐ2位株主となっています。
オアシスvsアルパインお互い一歩も引かず
カーナビや車載音響機器を手がけるアルパインが、「物言う株主」オアシス・マネジメントに狙われています。
オアシスは香港のヘッジファンドで、現在アルパイン株式の9.18%を保有し、アルプス電気(40.43%)に次ぐ2位株主となっています。
オアシスは、アルプス電気によるアルパインの完全子会社化について手法や条件の見直しを求め、6月に予定されているアルパインの定時株主総会での委任状争奪戦に臨み、法廷闘争も視野に入れています。
オアシス創業者で最高投資責任者(CIO)のセス・フィッシャー氏は、アルプス電気によるアルパイン買収を「略奪の企て」と批判し、一方、アルパイン側も現時点で条件等を変える予定はないと発表するなど、一歩も引かない姿勢を見せています。
アンフェアな統合比率
オアシスvsアルパインの攻防の発端は、昨年7月に公表されたアルプス電気との経営統合でした。
アルプス電気は、アルパイン1株に対してアルプス0.68株を割り当てる株式交換を行い、事業持ち株会社を設立する経営統合計画をアルパインに持ちかけましたが、オアシスはこの統合計画の交換比率について、「アルパインが不当に低く評価されている」と噛みついたのです。
統合発表前のアルプス電気とアルパインの株価を比較すると、交換比率は1対0.5程度でしたが、アルパインが2017年10月と2018年1月に業績を上方修正したため、現在は約0.8で推移しています。
オアシスのフィッシャー氏は「業績がよくなることを見越し、先に低い交換比率を決めて統合を発表したのはアンフェアだ」と統合決定のプロセスを批判しました。
アルパインは、業績の上振れを見越していたことを真っ向から否定しましたが、M&Aの発表から実行まで1年以上もかかれば業績に変動が生じることは明白で、オアシスが噛みつくのも無理はありません。
オアシスに賛同する海外投資家
またオアシスは、3月期の期末配当として1株325円を支払うことを提案していますが、アルパインの取締役会は今月2日、運転資金や潜在的な企業買収への準備金として一定程度の現預金を確保する必要があるとの理由で、このオアシスの株主提案への反対を決議しました。
しかし、アルパインはネットキャッシュが約823億円もあるキャッシュリッチ企業で、オアシスが要求する期末配当(配当額は約224億円)を実施しても、アルパインの財務に与える影響は軽微です。
むしろ経営効率を重視する海外投資家からは、資金を効率的に使えていないように映るでしょう。
現に、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)がオアシスの株主提案に賛成の意向を表明し、さらにアルパイン株を保有するとされる米投資ファンド、エリオットマネジメントもオアシスに賛同すると見られています。
真の狙いは「TOBへの変更」
オアシスはアルプス電気とアルパインに対し、アルパイン株を1株2,400円で買い取る意向を伝えていますが、これはあくまで揺さぶりに過ぎません。
オアシスの真の狙いは「経営統合の方式をTOBに変更させ、価格を1株2,400円以上に引き上げさせる」ことです。
アルプス電気は、アルパインの株式の保有比率が約4割を超えているのに対し、オアシスの保有比率は約1割にとどまり、仮に委任状争奪戦となった場合、獲得しなければいけない委任状の票数には大きな差があります。
しかし売り手の少数株主にとっては、市場価格にプレミアムを上乗せした価格で売却できるTOBの方がベターです。
オアシスは、これまでパナソニックによるパナホームの完全子会社化のスキームをTOBに変更させた実績を持つ、筋金入りのアクティビストです。
オアシスの揺さぶりによって、アルプス電気がアルパインとの株式交換を断念するのか、それとも強硬につっぱねるのか、アルパインの臨時株主総会まで目が離せない状況になりそうです。