日銀のETF買い入れによる悪影響 効果も無く、延命も2022年には限界か

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Bank of Japan

今年3月1日、米トランプ大統領が鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動すると表明し、また22日には中国製品に高関税を課す制裁措置を発表したことの影響を受け、日経平均株価は3月26日に年初来安値を更新する20347円49銭まで値を下げました。

波乱が続いた3月の日本株市場において、日銀によるETF(上場投資信託)買いも膨らみ、月間ベースでの購入額が過去最高となった上、四半期ベースでも記録を塗り替えました。

「親方日の丸」である日銀のETF買いは、一見すると相場の下値を支えているように映りますが、決して褒められた政策ではなく、むしろ株価を押し下げる要因にもなりかねません。

日銀 悪影響を及ぼす波乱のETF買い入れ

日銀のETF買い入れとは

日銀のETF買いとは、日銀が公開市場操作において市場からETFを買い入れて、資金を供給することです。

ETFは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など特定の指数の動きに連動する運用成果を目指し、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託です。

例えば、東証一部に上場する株式全銘柄を対象とするTOPIXに連動するETFを買うということは、東証一部上場銘柄をすべて保有するのと同じ効果が期待できます。

日銀のETF買い入れプログラムは、リスク資産の需要を刺激するために2010年12月から開始され、2013年に1兆円だった買い入れ枠は2014年3兆円、2015年に3.3兆円、そして2016年には6兆円まで拡大されました。

公正な株価形成への悪影響

2010年以降、日銀が買い入れたETFの保有残高は約23兆円と、東証一部の株式時価総額(647兆円)の3%強を占めており、マーケット関係者の間では日銀のETF買いによる副作用への懸念も強まっています。

日銀のETF買いが株価の下支えに一定の役割を果たしていることは事実ですが、単に買いの需要だけで株価下落を食い止めるためには、日銀は今後もずっと買い続けなければなりません。

もし日銀がETFの買いをやめた場合、企業の業績が伴っていなければいずれ株価は下落に転じます。

ETFの買い入れ枠拡大については、日銀の政策決定会合において佐藤委員と木内委員(2人ともすでに退任)が「日銀の財務健全性と株価の公正な形成を歪める」との理由で反対していましたが、多数派に一蹴されてしまいました。

2人とも証券業界出身であることから、ETF買い入れが株式市場に与える悪影響を十分理解していたのでしょう。

ガバナンス機能低下の恐れも

また、日銀がETF買いによって「隠れた安定株主」となることによる弊害も指摘されています。

ブルームバーグの試算によると、指数採用225銘柄のうち約200社で、日銀が保有率上位10位内に入る実質的な大株主となっています。

このペースでETFの買い入れが続いた場合、2022年3月には日銀のETF保有残高は約40兆円まで膨らみ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の約36兆円を凌ぎ、日本株の最大の保有者となります。

しかし日銀は、議決権行使への関わりについて方針を明らかにしていません。

また、日銀が購入したETFの株主議決権はETFの運用会社が保有しますが、運用会社はコスト面などから株主代理権を行使するためのエンゲージメント(投資先企業との対話)に時間を割くことができません。

そのため、もし日銀が何もしなければ議決権が空洞化することになり、保有企業の経営が緩む恐れがあります。

日銀のETF買い入れ枠拡大は、皮肉にも安倍政権が掲げるコーポレートガバナンス強化に逆行する事態を招いているのです。

いずれにしても、この先ずっと日銀がETF買い入れを続けることは不可能で、出口戦略を誤れば日銀の売却によって株式市場が大きなダメージを受ける可能性があります。

手遅れにならないためにも、一刻も早いマーケットの正常化が望まれます。

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