米国がここのところ矢継ぎ早に行っている対ロシア制裁がかなり功を奏する形で、ロシア株もロシアルーブルも大きく値を下げる動きとなっています。
市場ではシリアの軍事攻撃の話だけがクローズアップされがちですが、過去にもロシアルーブルの暴落が市場に極めてネガティブな影響を与えているだけに、ここからの動きがどうなるのかが注目されるところです。
今回の株とルーブルの下落は生命線ともいえる原油価格の下落が伴っていないことからロシアにとってはかなり救われている面がありますが、先週だけで一気に8.5%近く下落したルーブルの価格だけでもかなり厳しい状況であることは間違いなく、一旦一息はついているものの、さらに下落が進めば新興国通貨にも悪影響を及ぼしかねない状況になりつつあります。
またロシアに投資している欧州諸国の経済にも悪影響を及ぼすことから、単純にロシア国内の問題として捉えるわけにはいかなくなりつつあります。
輸入大国ロシアの経済に深刻な影響を及ぼす自国通貨安
ロシア国内の輸出系企業は今回のルーブル安でかなり息を吹き返し暴落した株価もその一部が値を戻す動きとなっていますが、この国は食料品をはじめとして石油以外のかなりの品目を輸入に依存している関係上、インフレ圧力が高まることとなり、当然消費者物価も大きく上昇することになることから国民生活に大きな影響が出ることは間違いありません。
しかもこれまでの金融政策からみても金利を上げること以外に手立てがないことから、予想以上に国内経済に混乱が広がる可能性が危惧されるところです。
またロシア系企業や金融機関の一部はドル建ての債務をもっていることからあまりにも対ドルでルーブルが下落することになれば返済不能に陥り、またしてもデフォルトのリスクが高まることになりかねません。
現状の水準は1998年にデフォルトを引き起こした暴落に比べればまだまだではありますが、ドイツなど積極的にロシアに投資を行ってきた国とその企業にとってはかなりの死活問題となることから欧州経済にネガティブな状況が波及する恐れも出始めています。
新興国への影響も懸念される状況に
1998年のロシアルーブル暴落とその後のデフォルトからすでに20年もの歳月が経過していることからその記憶も薄れつつありますが、当時はロシア経済だけの打撃にとどまらず米国のヘッジファンドLTCMがまさかの破綻に陥るといったおまけも登場しただけに相応の注意が必要になってきそうです。
こうした状況は新興国通貨に影響を与えやすくなりますが、シリアに隣接しているトルコのトルコリラはすでに対ドル、対ユーロ、対円で大きく下落しており、その他の新興国通貨への影響も懸念されるところです。
16日米政府はロシアに対する追加制裁を一旦見送り、ロシアが新たなサイバー攻撃やその他の挑発行為に踏み切るかどうかを見極めたうえで判断する旨を発表し、またしても下落したルーブルは一旦値を戻す展開となっています。
ここのところトランプ大統領が発するツイッターが完全にメディア報道で突如として取り上げられることからヘッドラインリスクとして恐れられていますが、ロシアに対する対応もその一つになっており、株式のみならず為替市場も常に大きな影響を受けるようになっています。
しかしトランプが繰り広げる経済戦争は、まわりまわって自国の経済や金融市場にも大きなリスクが降りかかってくることを意識していませんととんでもないテールリスクになりかねない点は十分に注意していく必要がありそうです。