FRBへの口先介入をもくろむトランプ大統領の誤算

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FRBに不快感を募らせるトランプ大統領、利下げの口先介入も?

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は今月2日、トランプ大統領が3月にFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長に「君とは離れたくても離れられないようだ」と電話で伝えていたと報じました。

トランプ大統領は、1月のFOMC直後となる2月4日にも、ホワイトハウスでパウエル議長との夕食会を開いています。

夕食会では、金融政策についての議論はなかったとのことですが、パウエル議長はその後の議会証言で、大統領らとの「私的な会話だ」として言及を避け、会合の内容をめぐって臆測を呼びました。

3月8日の電話協議においても、FRBの利上げに不満を持つトランプ大統領が、パウエル議長の解任を検討したものの、法律上困難であることから、解任をあきらめて政策を変更させるため議長に直接圧力をかけたとの観測も出ています。

FRBに不快感を募らせるトランプ大統領、利下げの口先介入も?

FRBに不満タラタラのトランプ大統領

トランプ大統領は昨年の秋以降、パウエル議長が指揮した「緩やかな利上げ」路線をたびたび批判、「FRBは引き締め過ぎだ」「気がどうかしている」などとツイッターで「口撃」していました。

3月22日に米テレビ番組に出演した際には、20日に年内の利上げを見送る見通しを示したばかりのFRBに対し、「利上げがなければ米国の経済成長率は4%を超えていたはずだ」と不満を述べました。

「低金利が好きだ」と公言するトランプ氏は、利上げを進めるパウエルFRB議長を繰り返し批判しており、昨年12月の利上げ決定後にはパウエル議長の解任を非公式に協議しています。

しかし、大統領によるFRB理事解任までのハードルは意外に高く、簡単に解任できません。

連邦準備法は、「正当な理由」がある場合に限り大統領はFRB理事を解任することができると規定していますが、これは理事でもあるパウエル議長にも当てはまります。

連邦準備法では、「正当な理由」について定義されていませんが、少なくとも「独立機関のトップと大統領との間の政策不一致」は、この「正当な理由」にはなりません

国務省など省庁の長官や、ホワイトハウスのスタッフなどに関しては、大統領の任意で更迭が可能であることが憲法第2条に盛り込まれていますが、独立機関は米議会が法律の名の下で設立した機関であるため、米議会が定めた法律に則し職務を遂行している限り、その機関のトップを解任できない仕組みとなっています。

FRB理事にパウエル批判のムーア氏指名へ

パウエル議長の解任が難しいことを理解したトランプ大統領は3月22日、自身の考えに近い経済評論家、スティーブン・ムーア氏をFRB理事に送り込む意向を表明しました。

ムーア氏は保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」の客員研究員で、2016年の大統領選でトランプ氏の選挙対策顧問を務めた人物です。

ムーア氏は昨年利上げを続けたパウエルFRB議長に批判的で、FRB内外にある年3~4%成長への懐疑論は「ナンセンスだ」と言い切り、高成長を目指すトランプ大統領と歩調を合わせていました。

しかし、本来ならば研鑽を積んだ経済学者や元金融業界幹部、銀行規制監督当局者が起用されるFRB理事にムーア氏を指名することへの批判はすさまじく、FRB理事に承認される可能性は不透明です。

利下げを迫る「口先介入」も

ムーア氏をFRBに送り込めないとなれば、トランプ大統領はtwitterなどを使って利下げを迫る「口先介入」をしてくるはずです。

トランプ大統領は昨年11月、FRBが「金利を下げるのをみてみたい」と発言したこともあり、トランプ大統領の目には現行の政策金利2.25%~2.50%は高すぎると映っていることでしょう。

FRBがハト派的な政策スタンスに転換し、景気減速の兆候がみられる現状において、トランプ大統領が利下げを求める発言に及ぶ環境は整っています。

トランプ大統領の「ご乱心」にアメリカ経済が振り回され、アメリカ発で世界経済が混乱に陥るようなことがないことを願うばかりです。

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