米国債で逆イールドが発生した原因を冷静に分析してみると

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米国は「逆イールド」でリセッション入りするのか?

今月22日、米国債券相場で米10年債利回りと3カ月物TB利回りが逆転する「逆イールド」が発生しました。

米国では、昨年12月にも3年債と5年債の利回りが逆転する「逆イールド」が発生していますが、今回は伝統的に長期金利の指標となる10年債が3カ月物の利回りを下回りました。

10年債が逆イールドとなるのは、2007年以来、約12年ぶりのことで、米国が今年あるいは2020年序盤にリセッション(景気後退)入りするとの観測が強まっています。

「逆イールドは景気後退の予兆」と見られていることから、市場参加者は逆イールドに対する警戒感を強めています。

米国は「逆イールド」でリセッション入りするのか?

逆イールドとは

逆イールドとは、過度な金融不安や急激な政策変動によって短期金利が長期金利より高くなり、イールドカーブの一部あるいは全てにおいて右肩上がりではなくなることです。

短期金利が長期金利を上回るということは、短期の借り入れコストが長期の借り入れコストよりも高くなることを意味します。

このような状況になれば、企業には日々の運転資金の調達コストがより高くなるため、経営者は投資を抑制、あるいは凍結しなければなりません。

また企業だけでなく、一般消費者の借り入れコストも上昇するため、個人消費の減速によって経済は次第に縮小し、失業率も上昇します。

逆イールドは、古くからリセッション(景気後退)到来のシグナルとして知られており、米国ではリセッションが起きる前に逆イールド現象が見られ、リーマン・ショックやドットコム・バブル崩壊の前にも逆イールドが発生しています。

ちなみに米国では、逆イールドが起きてリセッション入りしなかったのは、過去50年においてたった1度だけです。

過去の逆イールドとは全く異なる

マーケットでは、逆イールドが発生してからおよそ12カ月から24カ月でリセッション入りするとされており、今回逆イールドが発生したことにより、年内あるいは2020年にリセッション入りするとの意見が多く聞かれます。

しかし今回の逆イールドは、過去のケースとは全く違った要因で発生している点についてはあまり言及されていません。

まず、今回米国の長期金利が短期金利よりも大きく下げた大きな要因は、予想を大幅に下回る欧州経済指標を受け、投資家がより安全な米長期債を買いに走ったためです。

今月22日に発表されたドイツの製造業PMIは、2012年以来の低水準となっており、欧州経済が本格的な減速に見舞われ、ドイツ10年債の利回りがマイナスとなる中で、米長期債に資金が流れるのは、むしろ自然な流れです。

また米国経済の成長は、確かに2018年の平均水準から減速していますが、これは減税効果の薄れや35日間の政府閉鎖、米中貿易摩擦など政治的不透明感によるところが大きく、これまでの景気後退期と比べて極めて細分化された要因が影響しています。

現在、米国は景気拡大サイクル後期ではあるものの、雇用創出は堅調で賃金も実質ベースで伸びており、減税効果は薄れても代わりに政府支出が増えています。

社債市場においても、投資適格債、高利回り債ともに比較的小さなスプレッドで取引されており、景気減速を示唆していません。

予言を自己実現させてしまうリスクも

一般的に、リセッション入りへの指標とされるのは2年債と10年債の利回りで、3カ月物TBと10年債の利回りに指標性があるのかは疑問です。

また、米国のその他の指標を見ると、FRB(米連邦準備理事会)の政策金利「FF金利」は名目ベースでGDP成長率を大きく下回っており、米国の金融環境はそこまでタイトにはなっていません。

しかし、今回の3カ月物TBと10年債の逆イールドがリセッションの前兆だと読み違える人が多ければ多いほど、株価は下落してボラティリティーが上がり、市場に流動性不足のスポットが出現するリスクが高まります。

この状況が続けば、家計と企業の信頼感が損なわれ、企業投資の決定は先送りされ、実際にリセッションシグナルとなってしまう危険があります。

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