ドイツ銀行、弱者合併構想の行方

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ドイツ銀行合併

今月12日、ブルームバーグが事情に詳しい関係者の話として、ドイツ銀行とコメルツ銀行が非公式の合併協議を強化していると伝えました。

ドイツ銀の取締役会はコメルツ銀との交渉を承認し、これまでこの合併に抵抗していたドイツ銀行のクリスティアン・ゼービングCEOも、抵抗を断念したといわれています。

複数の関係者によれば、独財務省も輸出経済を下支えする中小企業を支援するため、状況が悪化する前に両行が合併することを支持しているようです。

しかし、ドイツ銀首脳陣に近い関係者によると、戦略的な選択肢としてUBSグループやBNPパリバ、INGグループなど別の欧州銀行との合併も検討されているようです。

ドイツ銀行とコメルツ銀行の合併、政府主導で実現の可能性高まる

「弱り目に祟り目」のドイツ銀行

同行の危機は、これまで何度も伝えられてきました。

2016年6月に英国のEU離脱が決まると、同行は英国向けの融資残高が多く、ポンド安などの通貨不安によって大打撃を受けるとの懸念から株価は急落しました。

また今年の5月には、米監督当局が同行の米子会社を問題銀行のリストに加えたと報じられ、S&Pグローバル・レーティングは同行の格付けを「A-」から1段階引き下げ「BBB+」とすることを発表しました。

これにより、同行の大株主である中国の海航集団(HNAグループ)が出資比率を引き下げています。

さらに今月6日、ドイツ銀行の株式トレーディング部門が2018年に約7億5000万ドル(約840億円)の損失を出したことが明らかになっています。

関係者によると、米株部門はもう何年もの間、利益を上げておらず、同行は株式業務全体の閉鎖を検討した時期もあったといいます。

合併は「弱者連合」にしかならない

マーケットでは、ドイツ最大手のドイツ銀行が業界第2位のコメルツ銀行を買収する、というシナリオがコンセンサスになっていますが、両行ともにそれぞれ経営に問題を抱えた銀行であり、両行が統合されても「弱者連合にしかならない」との指摘もあります。

ドイツでは、貯蓄銀行(シュパルカッセ)などの地域金融機関の存在感が高く、欧州では最もリテール部門での競争が激しい市場ともいわれており、統合によってリテール部門での収益性を高めることができる保証はありません。

統合のシナジー効果を出すためには、支店の統廃合や従業員の削減など、かなり大規模なリストラを進めることが必要になるでしょう。

しかし、ドイツ統一サービス産業労組幹部で、主要労組代表としてドイツ銀行監査役会メンバーでもあるヤン・ドゥシェック氏は、「合併が成立すれば多くの雇用が脅かされる」として合併に反対を表明しています。

ドゥシェック氏は、「合併なら少なくとも1万人の雇用が直接的に脅かされる」とし、「現時点で構想に上っている統合銀行は見込まれた成長を達成できない」とし、「おそらく将来的により多くの人員削減を強いられるだろう」と語っています。

実際、両行が3年近く前に非公式の合併協議に取り組んだ際には、2万から3万人の削減が見込まれていたと当時の協議に関与した関係者1人が明らかにしています。

合併後に誕生する統合銀行は、外国からの敵対的買収にさらされやすくなり、「経済的に無意味」との指摘もあり、ドイツ銀行の大株主の代表らはコメルツ銀との合併に疑念を表明し、代わりに米国事業の縮小を支持しています。

ドイツ政府は両行の合併に前向き

反対意見は多いものの、最終的にはドイツ政府主導でドイツ銀行とコメルツ銀行との合併が実現すると予想します。

コメルツ銀行は、10年ほど前にドイツ政府に救済され、現在でも政府が15%の株式を保有しており、もしコメルツ銀行が外国銀行に買収されてしまえば、中小・中堅企業向け融資業務を外国銀行に握られ、ドイツ銀行の競争力が一段と低下してしまう可能性があるためです。

またドイツ政府は、コメルツ銀行がウニ・クレジットやBNPパリバなど外国銀行に買収されることを警戒しています。

中小・中堅企業向け融資業務を外国銀行に握られ、ドイツ銀行の競争力が一段と低下してしまう可能性があるためで、政府としてはドイツ銀行のコメルツ銀行買収に前向きであるはずです。

かつてドイツ第2の銀行であったドレスナー銀行を買収したコメルツ銀行を、さらにドイツ銀行が買収するという、ドイツのかつての3大銀行が1行に統合されることになりそうです。

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