英国、いかなる場合でも合意なき離脱を回避する事を選択

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英議会がEU離脱延期を条件付きで可決

英下院は14日夜(日本時間15日未明)、約2週間後に迫った29日の欧州連合(EU)離脱を1回限り、6月30日まで延期するとの政府動議を賛成多数で可決しました。

動議は、下院が2度否決した離脱合意案を今月20日までに政府の離脱協定案を議会が可決するという条件がつけられ、地元メディアはメイ首相が来週早々にも3度目の採決に踏み切る可能性があると伝えています。

ただし、合意案承認は見通せず、歴史的なEU離脱を巡る英国内の混乱や不透明な情勢はまだまだ続きそうです。

英議会がEU離脱延期を条件付きで可決

メイ首相の求心力低下があらわに

英国とEUの離脱協議は、アイルランド国境問題を巡って膠着し、今なお混迷が続いています。

今月12日に、英・EUの離脱案を英議会に示しましたが、1月に続いて大差で否決され、これを受けてメイ首相は13日に、経済の混乱を防ぐために「合意なき離脱の回避」の是非を問う動議を提出しました。

しかし、メイ政権の案は「3月末にEUと合意なく離脱することに反対する」というもので、ひとまず「3月末」の合意なき離脱の回避は約束するものの、離脱を延期した場合の保証はしていないと解釈できる内容でした。

これに与野党超党派の議員グループが反発し、「いかなる場合でも合意なき離脱を回避する」という議員提案を提出、この案が賛成321票、反対278票で可決されました。

これにより、メイ首相の協定案は2度にわたって退けられることになりました。

離脱延期に前向きな姿勢を見せるEU側

英政府はEUに延期を申し入れ、21日からのEU首脳会議で延期期間など条件面の協議に入るとみられていますが、離脱の延期にはEU加盟国すべての承認が必要になります。

EU側は延期協議に応じる姿勢ですが、英国側から「なぜ延長するのか」について合理的な理由がなければ延期は認められません。

結局、英国とEUとの間で延期理由や期間で合意を得られず、3月末に合意なき離脱に陥る可能性は残っています。

離脱日延期を巡るEU各国首脳の見解は分かれており、マクロン仏大統が長期延期に懐疑的な見方を示す一方、メルケル独首相は英国に猶予を与えることに前向きな姿勢を見せています。

EUのトゥスク大統領は、「短期の延期は大きな効果をもたらさない」とし、英国に一段の猶予を与える選択肢を排除しないよう各国首脳に促しています。

トゥスク大統領は、少なくとも1年に及ぶ長期の延期を想定しており、21日のEU首脳会議で延期を巡り検討するよう求める考えを示しています。

EU離脱に向けた見通しは依然不透明

英議会で、「いかなる場合でも合意なき離脱を回避する」という案が可決したとはいえ、そもそも延期後の新しい期限までに何も合意を得られなければ、合意なき離脱は避けられません。

メイ首相の合意案は2回否決されていますが、それでも英・EUの合意案の手直しで英議会の承認を勝ち取る意向を崩していません。

メイ首相には、EUが嫌がる合意なき離脱のカードを持っていた方が、EUとの交渉を有利に進めることができるとの思惑があるようですが、すでに2度にわたって退けられた合意案が承認されるのか、見通しは不透明です。

長期延期になれば、離脱協議をしているのに英国も欧州議会選に参加する必要があり、英国とEU両方にとってデメリットにしかなりません。

メイ首相は、「英・EUの離脱案に賛同しないと、EUの仕組みから日に日に抜けにくくなる」と主張していますが、このような脅しに近いメイ首相の手法は、すでに効かなくなっています。

離脱延期の可決は、「3月末危機」の回避につながる意味では大きいですが、EU離脱を巡る英政治の混迷を根本から打開する切り札にはなりません。

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