FOMC年内利下げ観測後退、トランプ大統領の動向は?

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20190501FOMC市場の判断は?

米連邦公開市場委員会(FOMC)は、4月30日と5月1日の両日開いた定例会合を終え、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25-2.50%のレンジで据え置きました。

パウエル議長は、1日のFOMC後の記者会見で「現状の政策スタンスは適切だと考えている」と述べ、また将来の金利の道筋に関して辛抱強い姿勢を続けると表明しました。

このパウエル議長の発言を受けて、1日の米国株式相場は下落、S&P500種株価指数はほぼ6週間ぶりの大幅安となりました。

FOMCが政策金利据え置きを発表、年内の利下げ観測は後退

パウエル議長は依然楽観的

パウエル議長は直近の経済指標について、「物価上昇はいくぶん弱かった一方で、経済成長や雇用増は我々が想定していたよりも少し強かった」と述べました。

そのうえで、「強い雇用と持続的な経済成長のもと、物価上昇率は2%へ戻っていく」との基本シナリオを堅持し、基本シナリオ以外の可能性も「上下双方向に点検し、適切な対応を議論していく」としましたが、将来の政策変更の可能性は具体的に示唆しませんでした。

FOMCは、一部で予想された通り超過準備に適用する付利金利(IOER)を従来の2.4%から5ベーシスポイント引き下げて2.35%に修正しましたが、パウエル議長はIOERの修正はあくまでもFF金利を誘導目標レンジ内の推移におさめるためであり、「政策のシフトではない」と述べました。

パウエル議長が、景気やインフレに関して楽観的な見方を示した結果、「利下げは程遠い」との見方が強まり、金利先物市場での年内の利下げ確率は65%から55%まで低下しています。

マーケットは「年内利下げ無し」に傾く

パウエル議長が、物価の伸び悩みについて「一時的な要因が影響している」と述べたことを受けて、マーケットには「FRBが利下げに動く可能性は低い」との見方が広がっており、FRBは年内は政策金利を据え置く可能性が高いという意見が増えています。

パウエル議長が、現時点で「政策方針を大きく変えない」と明言した通り、FRBはマーケットが想定するほど利上げに慎重なハト派ではなく、むしろ米国経済の成長が続けば9月か12月にも利上げに動く可能性があるとみられています。

為替市場では、FOMC声明の発表直後にドル円は一時1ドル=111円ちょうど近辺まで上昇しましたが、議長会見を受けて111円60銭近辺まで下落しており、4月下旬に付けた年初来安値の112円40銭を下回れば、円は一段安となる可能性があります。

日銀をはじめとする主要国の中央銀行がハト派色を強めるなかで、景気拡大が続く米国との政策の方向性の違いから、ドルが主要通貨に対して強含む展開が予想されます。

また債券市場では、パウエル議長が今年のインフレ低下は一時的な要因によるものである可
能性があると述べたことを受け、国債利回りが上昇しました。

2年債利回りは、FOMC声明を受け2.21%と3月28日以来の水準に低下したものの、終盤の取引では2.30%に上昇、10年債利回りは一時2.46%と4月1日以来の低水準を付けましたが、その後は2.51%まで戻しました。

足元では雇用や消費の強さを示す指標が目立っており、長期金利には若干の上昇余地がありそうです。

トランプ大統領の動向は?

ここで一つ気になるのがトランプ大統領の今後の動向です。

トランプ大統領は4月30日、twitterで「1%といった利下げや、量的緩和をすれば米経済はロケットのように上昇する力がある」と発言していました。

パウエル議長は、トランプ大統領の口先介入について問われると「経済成長を続ける中で、雇用拡大を保ち、2%前後の物価上昇を実現することが使命だ」との基本原則を改めて示し、「我々は短期的な政治の考え方を議論しないし、政策決定の際に考慮しない」と強調しました。

しかし、これまで何度もFOMCに対して利下げを求める発言をしてきたトランプ大統領が、このまま黙っているはずはありません。

利下げ観測の後退で株安状態が続けば、トランプ大統領はパウエル議長への圧力を一層強めてくるでしょう。

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