為替市場におけるマーケットメイカーの今昔

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勢力図が変わる外国為替市場

ユーロマネー・インスティテューショナル・インベスター誌は昨年5月、JPモルガン・チェースが世界の為替取引の市場シェアで首位の座を獲得し、これまで4年連続トップだったシティグループが5位に後退したと発表しました。

ユーロマネーのデータによると、1位JPモルガンと2位UBSという大手投資銀行に次いで、3位に「XTXマーケッツ」という聞き慣れない企業がランクインしており、この結果の背景には電子取引への広範なシフトという変化が大きく影響しているようです。

勢力図が変わる外国為替市場

XTXマーケッツの社員数わずか78名

XTXマーケッツは、クオンツトレーディングを手がけるマーケットメーカーです。

2016年に設立されたばかりの同社には、社員はわずか78名しかおらず、取引を執行するトレーダーは一人もいません。

アムロリア共同CEOによると、同社ではトレーディングについて人間が意思決定をすることはなく、アルゴリズムが意図した通りに機能しているかどうかをトレーディングアナリストがチェックするのみだとのことです。

しかし、同社のグローバル市場における1日あたりの総取引量は1200億ドル(約13兆円)に達するといわれ、すでに外為市場では世界でトップ5に入る有力プレーヤーとして認知されています。

取引商品は為替が大部分を占めていますが、現在は為替以外に株式、商品、債券取引にも勢力を拡大しており、昨年には同社が外資系証券を経由して、数千億規模の日本株を取引しているという噂もありました。

同社のライバルは、ハイフリークエンシートレーディング(HFT、高頻度取引)を手がけるバーチュ・ファイナンシャルやシタデルだといわれていますが、ザール・アムロリア共同最高経営責任者(CEO)は「高速ではなくスマート(賢い)が目標だ」と述べるなど、これを否定しています。

HFTが超高速ネットワークで得られた情報に基づいてトレーディングを行うのに対し、XTXでは数分あるいは数時間のうちに証券の価格がどう動くかを予測するためにテクノロジーを用いており、HFTとは対照的なストラテジーを採用しています。

同社コンピューターの処理能力は、世界最高のスーパーコンピューターにも匹敵するといわれています。

2014年に、MiFIDⅡのマーケットメーカーへの規制が発表されましたが、高い技術力を持つ同社はこの新規制を回避する執行ストラテジーを開発し、機関投資家への提供を開始した結果、欧米系ヘッジファンドなどの注文を集めています。

進む大手銀行とPTFの独占化

為替市場は、かつて銀行間取引が中心でしたが、銀行の取引量は相対的に低下し、PTF やヘッジファンドなど新規の取引業者のシェアが拡大していますが、こうした背景には電子取引の台頭が大きく影響しています。

外為市場は、かつて電話などを通じたボイス取引や専用回線を用いる電信取引が中心でしたが、1990 年代以降、インターバンク市場では取引の効率化を目的に、ボイス取引から電子ブローカー取引への移行が進みました。

2010 年代になると、PTFと呼ばれる専門の取引会社やヘッジファンドも電子ブローカー取引に参加するようになり、一部のPTFやファンドは自らが運営する電子取引プラットフォームを顧客に開放してマーケット・メイク業務を手掛けるところも出てきました。

電子取引プラットフォームは、そのアルゴリズムの設計を含むシステム開発に莫大な費用がかかるため、従来の為替ディーラーの主役であった銀行でも、資金力や開発力がない銀行は独自の電子取引プラットフォームを立ち上げることができません。

その結果、独自の電子取引プラットフォームを顧客やインターバンクに提供できるのは一部の大手銀行に限られ、個別取引プラットフォームの開設やアルゴリズム取引の開発費用を賄えない中小の銀行は、顧客とインターバンク市場を繋ぐ代理店業務として為替取引するしかないのです。

資金力のない中小の銀行は、大手銀行かXTXマーケッツのようなPTFのプラットフォームを利用するしかなく、為替取引の市場シェアは今後ますます大手銀行とPTFの独占化が進むでしょう。

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