「パウエル・プット」に期待できない理由

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パウエル・プット

今月4日、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、イエレン、バーナンキ両元議長との討論会で、利上げを停止する可能性もあり得るとの考えを示しました。

パウエル議長は、「利上げは既定路線ではない」と強調した上で、必要に応じて「常に政策スタンスを大幅に変更する用意がある」と述べ、当局が必要と判断すれば金融引き締めの停止など柔軟に対応できると強調しました。

この発言は、中国の景気減速懸念から1年の大半を通じて政策金利が据え置かれた2016年の状況を引き合いに出したものです。

市場では、株価回復を促す「パウエル・プット」を強く求める声が聞かれますが、2016年と違い現状のような不安定な相場において「パウエル・プット」がどのくらい効果があるのか甚だ疑問です。

暴落の中で行われたFRB元議長たちとの討論会

「パウエル・プット」とは

「パウエル・プット」とは、パウエル議長の名前とデリバティブの一つである「プットオプション」を組み合わせた造語です。

プットオプションとは、「あらかじめ約束した価格で売る」という契約のことで、プットオプションを買っておけば、自分の持ち株が下がった時にプットオプションの利益で株の損失をカバーできるというものです。

もともとは、グリーンスパン元FRB議長の時代に「グリーンスパン・プット」という言葉が使われたのが始まりで、株価が急落するたびに金融緩和を行って株価を下支えしたことから、「まるで株にプットオプションが付けられているようだ」といわれ、こう名付けられました。

株を買っていた投資家たちは、「グリーンスパン・プットがあるから」という安心感から積極的にレバレッジをかけて株を買い続けましたが、その結果バブルが発生し、2001年にはITバブル崩壊が起こりました。

グリーンスパンの後を継いだバーナンキ議長も、「バーナンキ・プット」と呼ばれる超金融緩和措置を行いましたが、結局景気後退は止められず、厳しい批判を浴びました。

FRBと市場の認識に乖離

パウエル・プットへの期待が高まっていますが、ここで一つ注意しなければならないのは、パウエル議長は利上げを停止すると言ったわけではなく、また量的引き締めを見直すと言ったわけでもないということです。

今月4日に発表された12月の雇用統計は、市場の予想を大きく上回る伸びを見せ、パウエル議長は「アメリカの景気は好調が続く軌道にある」との認識を示しています。

今後も経済指標の好調が続けば、たとえ3月の利上げは見送ったとしても、4月以降は再び利上げに舵を切ってもおかしくありません。

一方、市場はすでに景気減速を先取りしており、米金利先物はすでに2019年の利上げ見送りと、2020年の利下げすら織り込んでいます。

市場が「年内の利上げよりも利下げの公算の方が大きい」と見込んでいる状況でパウエル・プットを発動したところで、果たしてどれほどの効果があるでしょうか。

より大きな暴落を招く恐れも

もし仮に、FRBが量的引き締めのペースを多少落とすことができたとしても、量的緩和から量的引き締めへの転換という大きな流れを覆すことは難しいでしょう。

そもそも、昨年下旬から続いている株価下落の主な原因は、「逆イールド状態」になっている長期金利の上昇や、米政府機関の一部閉鎖状態が続いていること、そして中国との間で繰り広げている貿易戦争などによる不確実性によるものです。

こうした不安定な状況で、パウエル・プットによって一時的に株価が回復しても、それは単なる延命策に過ぎず、さらにボラティリティを高めてしまう可能性があります。

むしろ、パウエル・プットが正常な市場の価格形成を歪め、ITバブルやリーマン・ショックの時と同様により大きな暴落を招いてしまう恐れがあるということを、我々は過去の教訓から学ばなければなりません。

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