混迷の英国、EU離脱交渉に出口はあるか?~迫るEU離脱期限~

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英国EU離脱交渉

英国の最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、今月17日夜、メイ首相に対する不信任決議案を下院に提出しました。

メイ首相は、土壇場で議会の採決を見送ったEU離脱協定案について、来月7日から審議を再開する方針を示しましたが、労働党は「時間稼ぎは許されない」として批判を強めています。

この不信任案は、政権ではなく首相個人に向けられたものであるため、政権が応じる必要はなく、必ずしも解散・総選挙につながるものではありませんが、与党・保守党の不信任投票を乗り切ったばかりのメイ首相にとって厳しい状況が続いています。

混迷を極めるEU離脱交渉に浮上する「ウルトラC」

メイ首相の政治手腕に疑問符

保守党党首の不信任投票では、117票も信任しない議員がいることが判明し、「予想以上にメイ首相に対する拒否反応が強い」との認識が広がる結果となりました。

こうした背景には、メイ首相の政治手腕に疑問符がついていることが大きく影響していると考えられています。

メイ首相の最大の躓きとなったのが、12月11日のEU離脱協定案の承認をめぐる下院での採決です。

協定案の中で最も反発が強いアイルランドとの国境管理問題をめぐり、野党のみならず、与党内からも反対の大量造反が予想され、否決の公算が大きくなっていました。

一方EU側は、11月25日に離脱協定案を正式決定して以降、これが最終合意で再交渉はないと強調していました。

このままいけば、来年3月末は合意なき離脱となる可能性が高まり、メイ首相自身の退陣につながる恐れもあるため、側近閣僚らは反対派の保守党議員や、国内各地の有権者らへの説得工作に奔走していました。

しかし、採決が行われる12月11日の昼過ぎ、突如メイ首相が「緊急声明を発表する」と伝える速報やツイッターが一斉に流れ、午後3時半にはメイは首相が「あす採決すれば、離脱案は大差で否決される」として延期を発表したのです。

メイ首相がどの時点で延期を決断したのかは明らかになっていませんが、この一件でメイ首相は政治家や有識者から「前代未聞の大失態」と痛烈な批判を浴びることになりました。

官僚重用が批判の的に

メイ首相はEUとの交渉において、自ら離脱担当相ポストを新設したにもかかわらず、閣僚の政治家より側近の官僚で欧州問題担当顧問を務めるオリバー・ロビンズを重用し、同僚の政治家を信用していないとして与野党内から厳しく批判されています。

11月中旬、政府がまとめた離脱協定案に納得できないとして離脱担当相を辞任したドニミク・ラーブも、協定案の内容もさることながら、最終段階で自分の知らないうちに文書が書き換えられ、EU交渉が行われていたことがわかって激怒した、という情報もあります。

ラーブは結局、12月12日の保守党のメイ首相に対する信任投票で不信任に投票しています。

メイ首相は、2017年6月8日の総選挙でも、この「官僚重用」の政治スタイルで大失敗を犯しています。

この時の選挙では、党のマニフェストに突如、高齢者の社会保障費にかかわる税制改正を盛り込み、激しい批判を受けました。

結局、発表2日後に撤回しましたが、この政策は当時の若い側近官僚2人の発案で急きょ盛り込まれたことがわかっており、選挙後にこの官僚2人は退職しています。

政権基盤強化を狙って打った総選挙で、結果的に大幅に議席を減らして少数与党に転落しており、この選挙での失態は、今回の採決延期、そして今後も可決の見通しが立たない、という苦境に結びついています。

Xデー延期の可能性

保守党党首の不信任投票を何とか乗り切ったメイ首相ですが、依然、離脱をめぐる見通しは厳しいままです。

そこで、ここにきて「結局時間切れになり、3月29日の離脱期日を延期するのではないか」という “ウルトラC”案も浮上しています。

英国は、今年に入って成立したEU(離脱)法で、離脱期日を2019年3月29日午後11時と決定しましたが、この法律では大臣が「法規則により」期日を修正することが可能だと定めています。

法案は下院特別委員会で審議され、案通過には両院での承認が必要となりますが、手続きとしては2日間ですべて完了することも可能です。

では、EU側ではどのような手続きが必要でしょうか?

EUの残る27カ国は、リスボン条約50条に基づく離脱交渉の延長を全会一致で決定する必要があります。

延期を認める条件として、「国民投票の再実施」や「英国で新政権が誕生する」など、やむを得ない理由が必要になりますが、EU側にも英国の合意なき離脱による悪影響への懸念があるため、延長が認められる可能性は大いにあります。

今のところ、メイ首相は来年3月のEU離脱方針を断固として崩していませんが、離脱期日が近づくにつれ、選択肢としてこの離脱延期を考慮する必要が生じるかもしれません。

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