利上げ見送りの可能性であらわれる米国市場の株価底打ち期待

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NYダウ底打ち期待

今月10日の東京株式市場では、前週末の米国株式市場でNYダウが558ドル安と大幅に続落した流れを受けて、朝方から主力輸出株をはじめ広範囲に売りが波及しました。

日経平均株価は一時500円超の下げを記録、その後はやや下げ渋ったものの、結局終値は2万1219円50銭と10月29日以来約1ヵ月半ぶりの安値を記録しています。

株価の下げ要因として、中国の通信機器大手・ファーウェイの孟晩舟CFO逮捕により、米中貿易摩擦の影響が世界経済に及ぶとの見方が取り沙汰されていますが、意外にも米市場関係者の間ではこの「ファーウェイ・ショック」を歓迎する声も聞かれています。

「ファーウェイ・ショック」で底打ち期待の米国市場に浮上する利下げ観測

ファーウェイCFO逮捕はトランプ政権による戦略

孟CFOは、ファーウェイによる米国の対イラン制裁逃れに関与した疑いで1日にカナダで逮捕されました。

1日といえば、アルゼンチンでG20を終えたばかりのトランプ大統領と習近平主席が1年1ヵ月ぶりとなる米中首脳会談を開いた日であることから、米政府は首脳会談の時点でこの事実を把握していたことは間違いなく、会談時点で米国の対中強硬策はかなり固まっていたと考えられます。

また、実際には1日に逮捕されていたにもかかわらず、報道されたのは6日だったことからもわかる通り、米国は孟CFOの身柄拘束に向けて周到に準備を進めており、米中対立が再度激化することも想定済みだったはずです。

市場では、今回の逮捕劇はトランプ政権による戦略だったという考えが多数派を占めており、マーケットへの影響も限定的だと冷静に受け止められています。

株式市場は底打ちを期待

もっとも、「ファーウェイ・ショック」は、あくまで株価の下落幅を拡大させた一つの材料に過ぎず、株式市場を弱気センチメントに傾けていた主な要因は「逆イールド現象」です。

逆イールドとは、過度な金融不安、急激な政策変動により短期金利が急騰し、長期金利を大きく上回った状態のことです。

今回の逆イールド現象では3年債と5年債のスプレッドが逆転し、2年債と10年債の利回りも約10年ぶりの水準まで縮小しています。

株式市場の急落は、トランプ大統領が「常軌を逸している」と批判するほどのペースで行われた利上げによってもたらされ、これによって逆イールド現象が発生しました。

しかし、もし逆イールド現象の発生により2019年に3回予定されている利上げが見送られ、場合によっては今月予定されている利上げも見送られることになれば、株式市場の底打ちとなる可能性もあります。

これまで利上げ観測で急落してきた株式市場にとっては、むしろこの「ファーウェイ・ショック」で底打ちが早まり、上昇トレンドへ転換できれば好都合なのです。

利下げは2020年半ばから?

株価下落が続く株式市場とは反対に、リスク回避による米国債需要の高まりで米国債券相場は急伸していますが、債券トレーダーの間では利上げ見送りどころか、「早ければ2020年に利下げする」との観測が浮上しています。

スワップ市場では、利上げサイクルがピークに達する時期の予想を、当局の予測では金融引き締めがまだ継続中とされている2019年末か2020年初めに前倒しする形で修正する動きが見られます。

今月4日、10年債利回りは9月以来となる2.9%を下回り、2年債と10年債のスプレッドは10bp(ベーシスポイント)を割り込みました。

これは、2年債と10年債の間で逆イールドが生じた2007年以降で最も小幅で、スワップ市場では2020年の初めごろに米利上げが終了した後、同年半ばまでに少なくとも5bpの利下げが織り込まれつつあります。

米格付け会社ムーディーズのチーフアナリストであるマーク・ゼンディは、米国経済は2020年夏にリセッション入りすると述べていますが、この発言はスワップ市場が2020年半ばまでに5bpの利下げを織り込む動きと符合しています。

先月までは想像もできなかった「2020年利下げ観測」ですが、米国経済の下方リスクは従来以上に高まっていると見た方がよさそうです。

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