「逆イールド・ショック」で、今後の米利上げペースはどうなる?

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逆イールドで金利はどうなる

今月7日の米株式相場は大幅続落となり、S&P500種株価指数は週間ベースで4.6%安と、3月以降で最大の下げを記録しました。

下落の要因として、雇用統計で非農業部門雇用者数が市場の予想を下回ったことや、ファーウェイCFO逮捕による米中貿易の見通悪化懸念が挙げられていますが、それと同時に市場では「逆イールド」現象が大きくクローズアップされています。

「逆イールドは景気後退の予兆」と見られていることから、市場参加者は逆イールドに対する警戒感を強めています。

長期債の金利低下が意味するもの

逆イールドとは

逆イールドとは、過度な金融不安、急激な政策変動により短期金利が急騰し、長期金利を大きく上回った状態のことです。

今回は、3年債と5年債の利回り格差(スプレッド)が逆転したことがクローズアップされましたが、これまで2年債と10年債の金利が逆転すると24ヶ月以内に必ずリセッションに陥っていることから、通常は2年債と10年債の利回りが比較されます。

ちなみに、今月に入り2年債と10年債のスプレッドも約10年ぶりの水準に縮小しています。

通常は、短期債は償還期限が短いため金利は低くなり、逆に償還期限が長い長期債は金利が高くなります。

これは、長期債を購入するということは長期的にインフレリスクを負担することになり、その分のプレミアムを要求するのが合理的だからです。

これをタームプレミアといい、タームプレミアムを考えれば短期金利より長期金利が高くなるのが普通で、だからこそイールドカーブは通常は右肩上がりとなります。

では、なぜタームプレミアムがあるにもかかわらず、逆イールドになるのでしょうか?

それは、「マーケットが将来の利下げを予想しているから」です。

現状は、FRB(連邦準備制度理事会)による利上げペース引き上げで短期金利が上昇していますが、一方でこれから景気が減速して政策金利が今より引き下げられているだろうとマーケットが予想しているのです。

金利引き上げの織り込み具合は急速に低下

FRBは2015年12月以降、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を8回引き上げています。

11月の雇用統計で、民間企業の平均時給は前年同月比3.1%増と約10年ぶり高水準を維持するなど、安定的な賃金上昇がみられることから、今月18ー19日に開かれるFOMCにおいて利上げはほぼ確実に実施されるでしょう。

しかし投資家の間では、ここ最近の市場の混乱は米国および海外経済がFRB当局者の想定以上に弱含んでいる前触れであり、この環境での利上げは危険との見方も出ています。

かつてジョージ・ソロスのヘッジファンドの運用担当者だったスタンレー・ドラッケンミラーは「私なら利上げを中断し、われわれが認識していないことを市場が知っているのか見極める」と話しました。

ドラッケンミラーは、これまでのFRBの利上げ消極姿勢や景気刺激策を強く批判してきた人物ですが、足元の相場動向には数多くの問題の兆候が見られるとし、今月の利上げ見送りの理由になると指摘しています。

またドラッケンミラーだけでなく、米金利先物のトレーダーの間でも2019年以降の金利見通しを巡っては不透明感が高まっており、市場の織り込み具合は急速に低下しています。

FOMCは今年9月の会合で、2019年の利上げ回数を3回とする政策シナリオを公表しており、中立水準と判断する政策金利は3.0%(参加者の中央値)で、2020年まで利上げを続けて政策金利を3.5%まで引き上げる考えを示していました。

今月の会合では2019年以降の利上げペースも公表する予定で、利上げサイクルの停止時期をどう表現するかが焦点となります。

ディフェンシブな投資戦略へ

逆イールド現象は、リーマン・ショックやドットコム・バブル崩壊の前にも見られていたことから、「市場暴落のシグナル」として恐れられています。

ドル円相場でも、ここ最近下値試しの動きが続いており、サポートラインとして意識されている112.25円付近を割り込むと一気に下放れする可能性もありそうです。

しかし、逆イールドになったからといってすぐに景気後退に突入するわけではありません。

株式市場においても、天井を打つタイミングは金利差がゼロになった半年から1年ほど先だといわれており、「逆イールド=即売り」と考えるのは早計です。

ただし、リーマン・ショック以降続いていた量的緩和による景気拡大も、いよいよ最終局面に近づいていることは間違いありません。

来るべきリセッションに備えて、株式ポートフォリオにディフェンシブ株を多く組み入れるなど、守りの投資戦略が必要になってくるでしょう。

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